地域の大人たちが教えてくれました
大切なことを子どもたちにも伝えていきたい

群馬県伊勢崎市境東町(さかいあずまちょう)に、江戸時代から続く「東町屋台囃子(あずまちょうやたいばやし)」。
250年もの歴史を持ち、昨年、伊勢崎市指定重要無形民族文化財として指定されました。
その伝統を受け継ぎ「伊勢崎市境 東町囃子保存会」で、自らも演奏しながら囃子長として組織をまとめる岡本宇正(おかもと たかまさ)さん。
一方、仕事ではデジタルエンジニアリングを駆使し、効率的に製品を製造する生産設備の設計や製作に携わっています。
目標を抱えながら夢に向かって努力する岡本さんに、お話を伺いました。

お囃子の伝統を受け継ぐ責任感と使命

岡本さんが「東町屋台囃子」を始めたのは7歳の時。「当時、姉がお囃子をやっていたので自然と私も参加するようになりました。私の住む地域では、子ども会でみんな一度はお囃子に触れるのですが、中学生になると勉強が忙しくなり辞めてしまう人がほとんどです。私が続けてこられたのは、気の合う仲間と過ごす時間が楽しかったことや、指導にあたってくれた大人たちの影響が大きかったと思います。」地域の大人たちから、お囃子だけではなく、人との関わり合いや礼儀など、社会に出てからも大切なことを教えてもらったと言います。

今では自分が教える立場となり、お囃子の指導を通じて『人を育てる』ことの難しさを痛感しているという岡本さん。「基本的には『ほめる姿勢』を大事にしています。私が子どものころはどちらかというと『しかられて』育ちましたが、今の時代はしかるだけでは受け入れられません。いかに楽しんで続けてもらえるかを考えて、良いところを伸ばしていけるように指導しています。」仕事を通じて学んだことがお囃子にも生かされているそうです。「仕事でもそうですが、口で言うだけでは心に響きません。周りを納得させるには、まずは自分がやってみせることです。「背中で教える」といいますが、言葉だけでなく実践して教えることを基本に、信頼関係を築くように心がけています。」

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「ロボット相撲」初戦敗退の悔しさをばねに

学生時代からメカに興味があったという岡本さんは『ロボット相撲』の大会に出場した経験もあるとのこと。「高校3年生の時に初めて大会に出場しました。結果は予選で敗退。とても悔しかったので、大学時代もOBとしてロボットづくりに協力していました。失敗と改善を繰り返し、大学2年生の時に世界大会で優勝しました!」学生時代に学んだことを生かせる仕事につきたいと思い、家族からの進めもありミツバに就職したそうです。
「配属先は工機部を希望しました。父親が同じように技術職でしたので、設備製作という職種はいつも身近なところにありました。上司や先輩たちに教わりながら、技術を磨き、現在はCADやCAE解析を使って、安全で、楽に・安く・早く・良いものだけを造り続けられる設備を意識して製作しています。」

最近は、海外での設備製作などに携わり出張の機会も増えたとのこと。
「グローバル化の中であらためて「ものづくり」の難しさを感じています。国が違うと文化や考え方も異なります。予期しない事態が起こることもあります。品質を維持しながらグローバルに製品を展開することがいかに難しいか、実感する毎日です。」世界とつながりを持つ中で心境にも変化があったそうです。「しかし、大変なことばかりではありません。たくさんの方と触れ合うことで自分自身の視野が広がり、考え方も変わってきました。海外から受け入れている実習生はみんな前向きで熱心ですし、見習うべき点はたくさんあります。そのような方と触れ合うことで自分自身も良い刺激を受けます。」

新しいものを取り入れながら、古き良き伝統を守っていく

お囃子と仕事を両立させながら、目標に向かって歩みつづける岡本さん。自分自身がお囃子の伝承に力を注げる環境にも感謝しているそうです。「私が今こうしてお囃子を続けられるのは、職場の上司や先輩・同僚のサポートがあるからこそ。お祭りの忙しい時期は仕事を調整し協力してくれる、そのような環境にとても感謝しています。」
また、お囃子を通じてこれからの夢を語ってくれました。「私が今まで学んできたことを、子どもたちにも伝えていきたい。人との付き合い方、礼儀や学ぶ姿勢など、学校では教えてくれないことを学べる環境は大事だと思います。現代はそういうことを学ぶ場面が少なく、社会に出てから苦労する人も多いと思います。例えば小学校のカリキュラムに取り入れて、地域と学校が協力して教育していけるような場をつくっていきたいです。(大きな夢ですが・・・)」

昨年2月には「東町屋台囃子」が伊勢崎市指定重要無形民族文化財に指定されました。「地元の東町の人達も期待してくれています。伝統芸能を伝承、活性化させていくにはまだまだ課題も残っています。古いものだけにとらわれず、新しいものを取り入れながらしっかりと守っていく、そのバランスが大事だと思っています。」
生き生きとした表情とともに、力強い熱意が感じられました。

(2015年1月)