ミツバグループは、サステナビリティのひとつである環境領域の方針として、1993年5月に「ミツバ環境宣言」を制定、公表しました。この宣言の実現に向けてグローバルで環境活動に取り組んでいます。
活動方針 | 2030年目標 | |
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1 | 脱炭素社会の実現に貢献するため、ライフサイクル視点でカーボンニュートラル達成を目指します。 | Scope1,2:50%削減 |
2 | 循環型社会の促進に貢献するため、金属・プラスチック等の資源の節約と有効利用に努めます。 | リサイクル率:90%以上 |
3 | 豊かな水資源を守るため、効率的な水の利用および排水の質向上に努めます。 | 取水量:1,376ML以下 |
4 | 製品への使用を含め、化学物質の適正管理と有害化学物質の使用廃止を図ります。 | 法令違反ゼロ |
5 | 環境マネジメントシステムを整備し、環境法令の遵守に努めます。 | 法令違反ゼロ |
6 | 上記による生物多様性の保全に貢献するとともに、環境ボランティア活動に積極的に参加します。 | 活動実施率:100% |
7 | サプライヤーと協働し、サプライチェーン全体で地球環境の保全に取り組みます。 | お取引先さま参加率:100% |
ミツバグループは、グループ統一の長期目標として「ミツバ環境ビジョン2046」を2017年5月に制定しました。このビジョンは「環境宣言」にある「豊かで安心できる環境の実現」を達成するための長期目標であり、CO2排出量の削減および資源使用量の30%削減を通じた「企業価値の向上」と、環境汚染リスクのゼロを目指す「自然環境の保全」との両立の実現に向けて、ミツバの創立100周年にあたる2046年を目標年度に定めています。
ミツバグループは、「ミツバ環境ビジョン2046」におけるCO2排出量の削減をさらに発展させ、「ミツバカーボンニュートラル方針」を2022年6月に制定しました。
ミツバグループでは、ミツバ環境宣言に基づき環境保全活動に取り組んでいます。「ミツバグループ環境マニュアル」にのっとってグループ全体の環境マネジメントシステムを構築し推進しています。グループ各社は環境マネジメント活動実績を年2回ミツバ本社に報告します。ミツバ本社は実績の有効性を評価するため、定期的に「環境ビジット監査」を行い、環境マネジメントシステムの有効性および適切性を確認しています。
ミツバでは、国内グループ会社を含めた「EMS委員会」を年3回開催し、環境課題の検討や環境コンプライアンスのための情報共有、パフォーマンス情報を共有することで、環境リスクの低減につなげています。年に1度行われる全社環境統括管理者である代表取締役副社長執行役員によるレビューでは、取り組みの有効性および適切性を確認しています。経営への影響度が大きい案件については上位会議体である「ESG会議」にて決議しています。
ミツバグループでは、主要な関係会社を対象範囲として、ISO14001:2015に準じた環境マネジメントシステムを構築しています。2024年3月末時点では、生産拠点を主体にミツバグループ25社(国内7社、海外18社)55事業所(事業所比率で86%)がISO14001の認証を取得しています。
お取引先さまに対しては、「ミツバグループグリーン調達ガイドライン」を発行し、ISO14001等の認証取得を推奨しており、サプライチェーン全体で環境保全に取り組んでいます。
ISO14001外部審査
汚染された自然環境を健全な状態に修復するには、多大な時間と費用がかかります。そのため、環境保全に対する当事者意識を育てるように、国内のミツバグループの全社員へe-ラーニングによる基礎教育を実施しています。加えて、階層別教育や事業所・職場固有の環境教育を実施することで法令遵守やリスク防止に取り組んでいます。
環境ビジット監査
ミツバでは、法規制の遵守状況や環境マネジメントシステムのPDCAサイクルが適切かつ有効に機能していることを確認するために、全ての事業所で内部環境監査を毎年実施しています。監査においては、過去の監査結果や環境リスクなど環境課題の変化を考慮した重点監査項目を設定しています。
また、内部環境監査員の社内資格を取得するための講習会や資格者を対象としたブラッシュアップ講習などを定期的に開催しています。
三葉電器(大連)の第1・第3工場では、中国環境保護規制対応のため揮発性有機化合物(VOC)排出量を抑制する排気ガス処理装置2台を2022年に導入し、大気への排出量基準1トン/年以下に抑えています。VOC物質をろ過した後の排気を高温燃焼する際に電力を多く使用しますが、最適な装置稼働となるようプログラムを組むことで稼働時間を短縮し、安全と環境法令を遵守しつつ電力使用量も抑制しています。
また第1工場では生活汚水を処理するためAO活性汚泥、凝集沈殿、砂ろ過による排水処理を行っています。2023年に清浄化のため薬剤投入量の適正化と投入時間の最適化を行いました。排水処理基準を遵守しつつ、最適な排水処理管理を行うため日々監視を行っています。
VOC処理装置
排水処理管理室
薬品漏れを想定した対応訓練
ミツバグループは、特定したマテリアリティ(重要課題)を中期経営計画中の「環境機能方針」に落とし込み、CO2排出量の削減や環境管理体制の強化に取り組んでいます。グループCO2排出量は、カーボンニュートラル委員会活動を意欲的に推進することにより、2018年度比10%と大幅に削減できました。
重点施策 | 2023年度 | 2024年度 | ||
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目標 | 実績 | 評価 | 目標 | |
CO2排出量の削減 | グループ全体CO2排出絶対量:2018年度比 | ○ | 9.0%の施策立案・推進 | |
6.0%削減の施策立案・推進 | 9.5%削減の立案完了 (削減率実績:10.0%) |
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持続的な省資源 | グループ廃棄物リサイクル率:90%以上 | 96.4% | ○ | 90%以上 |
グループ全体水使用量:1,395ML以下 | 1,247ML | ○ | 1,376ML以下 | |
大気汚染の防止 | めっき施設排ガス濃度: 塩化水素80mg/㎡N以下 塩素30mg/㎡N以下 |
未検出 | ○ | 塩化水素80mg/㎡N以下 塩素30mg/㎡N以下 |
EMS運用によるリスク低減 | 重大違反ゼロ | 重大な環境汚染、事故 および法令違反はない |
○ | 重大違反ゼロ |
製品規制物質規制への対応 | 重大違反ゼロ | 重大な法令違反はない | ○ | 重大違反ゼロ |
業界標準による管理体制評価:3.5点以上 | 3.2点 | △ | 3.5点以上 | |
生物多様性への貢献 | 環境ボランティア活動実施率:100% | 100% | ○ | 100% |
評価基準(〇:100%、△:80%以上、100%未満)
これまでミツバグループは、グループ内のCO2排出量削減に取り組み、着実に成果を出してきました。しかし、カーボンニュートラルの実現に貢献するには、 製品のライフサイクル視点で事業活動により直接的・間接的に排出するCO2排出量の把握・削減にサプライチェーン全体で取り組む必要があります。2021年度より代表取締役社長を委員長とした「カーボンニュートラル委員会」を発足し、その直下に、開発、生産技術、生産、サプライチェーンマネジメントの領域を分けた推進部会を設置し、従来のグループCO2排出量の削減から、材料調達から製品・部品の輸送、さらに製品の使用段階まで拡大し、サプライチェーン全体での削減に挑戦しています。
カーボンニュートラル達成のためには、材料調達から製品・部品の輸送、さらには製品の使用や廃棄まで取り組み範囲を拡大し、サプライチェーン全体でCO2排出量を削減していく必要があります。また、製品1個当たりのCO2排出量を見える化し、最上流(開発機能)へ情報提供することにより、環境配慮設計や材料選定のさらなる改善につながることが期待できます。
カーボンニュートラルトピックス
「ミツバグループカーボンニュートラル方針」の達成には、グループ内のすべての従業員の協力が必要です。社内向け専用ホームページの開設、教育動画の作成、また外部動向やグループ内の取り組み情報などをまとめた「カーボンニュートラルトピックス」の定期配信など普及啓発にも努めています。
2030年にScope1,2(グループCO2排出量)を2018年度に対して50%削減する目標に向けて、削減構想やロードマップを整備し、高効率生産の実現と生産技術力の進化に挑戦するとともに、再生可能エネルギー導入を進めています。
2023年度は、年6%の削減施策の立案目標に対して、9.5%相当の施策が着実に進められCO2排出量削減と合わせて、高騰するエネルギーコストを抑制することができました。また再生可能エネルギーの活用も積極的に進めており、赤城工場ではオンサイトPPAモデルによる太陽光発電システムが2024年1月に稼働し、ミツバグループの太陽光発電システムによる発電量は年間で合計2,840MWhとなりました。今後も地域に適した再生可能エネルギーの利用を進めていきます。
コンプレッサー排熱の有効活用
福島工場では、カーボンニュートラル活動の一環として「ナオス・ヤメル・トメル・サゲル・ヒロウ・カエル」の6つの観点で課題を抽出し、改善に取り組んでいます。
「ヒロウ」の観点では、コンプレッサー室の移転と合わせて排熱を有効に活用することを検討し、冬季に最大となる空調負荷を緩和しています。電力使用量や暖房用の灯油使用量を抑制することで年間118.1t-CO2の削減を実現するとともに、従業員の作業環境も改善しています。
低圧成形技術を採用した射出成形機
ミツバ・ベトナムのロテコ工場では、射出成形機のダウンサイジングや樹脂材乾燥機への供給エアー圧力の低減、樹脂材の捨てショット削減などの改善活動を行いました。
射出成形職場では、製品の面積や材料の流動性を考慮した成形条件を見極めて低圧成形技術を採用しています。その結果、110トンの射出成形機を新設することなく、現在ある50トン設備を有効に活用することができ、年間63.6t-CO2の削減や設備投資コストの抑制を実現できました。
ミツバ環境宣言にのっとり、ミツバグループでは循環型社会の形成と限りある資源の有効利用を進めています。あらゆる事業活動から発生する排出物の再資源化と適正処理を行うとともに、資源の有効利用を図るために、原材料の効率化改善や生産設備のダウンサイジングなどの技術開発を推進しています。樹脂成型行程では2040年のランナー廃棄量ゼロを目標として、グローバルでの加工改善を計画的に進めることで、より積極的なプラスチック使用製品産業廃棄物等の排出抑制と再資源化を進めています。さらなるプラスチック資源循環の促進のため、廃プラスチックのマテリアルリサイクル化に向けて処理委託先の見直し検討などに取り組んでいます。
ミツバグループでは、事業活動に伴って排水される水の汚染状況を定期的に監視しています。生産工程で使用した水は、高度な廃水処理施設で浄化した後に河川へ排水しています。廃水処理施設で浄化できない廃水は、産業廃棄物として適正処分することで、水環境の保全に努めています。
東日本ダイカスト工業株式会社では、2018年に生産設備の増設に対応するために、既存の廃水処理設備にUF膜処理装置ならびに生物処理装置を追加導入することで、これまで以上に安定した汚染除去処理を行っています。また、水関連のインパクトの大きなアジア拠点では雨水貯留による水資源の有効活用や消費量の削減に積極的に取り組んでいます。ミツバ・インディア Pvt. Ltd.では、表面処理工程からの排水を再利用するため、循環型の排水処理装置を導入し、限りある水資源を有効活用しています。
東日本ダイカスト工業(株)排水処理装置
ミツバは、海外グループ会社の環境法規制の遵守状況についても、現地を訪問して現場を直接確認することで、日々の運用状況を把握し指導しています。また、法令違反を未然防止するために、危険物の表示、貯蔵・取り扱いや輸送、さらに廃棄物の適正処理等に関する規定・業務プロセスや設備・施設を直接確認して指導を行っています。
大気汚染防止 | 工場から大気へ排出される粉じんや化学物質等の排出を抑制するため、集じん機や排ガス処理装置を設置しています。オイルミストが発生する工程にはミストコレクターを設置して発生するミストを回収しています。 また、新里工場のめっき施設から排出される塩素および塩化水素については、スクラバーにより除去しています。年2回以上、排ガスを測定していますが、いずれも検出せずに問題がないことを確認しています。 さらに、空調のエネルギー源を灯油から電気に変更することで、大気汚染の原因となる窒素酸化物や硫黄酸化物などの排出抑制を推進しています。 国内事業所から排出される化学物質に関しては、化管法(※1)(PRTR(※2)制度)が指定する物質やVOC(※3)の排出・移動量を監視するとともに、大気への排出を削減するために、対象となる化学物質の代替を継続的に進めています。 |
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※1 化管法:特定化学物質の環境への排出量の把握等および管理の改善の促進に関する法律の略
※2 PRTR:Pollutant Release and Transfer Registerの略。人の健康や生態系に有害なおそれがある化学物質について、環境中への排出量および廃棄物に含まれて事業所の外へ移動する量を事業者自らが把握して行政庁に報告し、行政庁は事業者からの報告や統計資料を用いた推計に基づき、排出量・移動量を集計・公表する制度
※3 VOC:Volatile Organic Compoundsの略(揮発性有機化合物)
フロン類の漏えい 防止 | 簡易点検や定期点検を徹底することでフロン類の漏えい防止に努めています。 また、算定漏えい量が年間1000t-CO2未満である事を定期的に確認しています。 |
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水質汚濁防止 | 工場からの汚染水の流出を防ぐため、排水処理装置や油水分離槽を設置し、日常管理を徹底するとともに、月1回から年2回測定し、継続的に監視しています。また、流出事故の発生を想定し、実地にて年1回、対応手順に従った訓練を実施しています。 |
騒音への対応 | 騒音に関しては、防音壁を一部設置するなど低減策を施すとともに、年2回敷地境界での騒音を測定し、継続的に監視しています。 |
土壌・地下水の保全 | 六価クロムによる土壌汚染が認められたミツバ研究開発センターについては、行政に報告の上、適切な措置に努めています。地下水の六価クロムおよびシアン濃度を年1回測定していますが、2018年以降は検出されていません。 また、テトラクロロエチレンによる土壌・地下水汚染が認められた富岡工場については、行政に相談の上、自主的に拡散防止措置を行っています。地下水のテトラクロロエチレンおよびその分解生成物濃度を年4回測定していますが、敷地外への拡散は防止されています。 |
ミツバグループでは、環境不適合が発生した場合は速やかに全社環境統括管理者(ミツバ本社)へ報告するとともに、発生した事業所は応急措置を行った上で、原因調査と是正措置を実施します。全社環境統括管理者は、実施された是正措置の有効性を評価し、他のグループ会社に是正措置の水平展開を指示します。
2023年度はミツバグループに関して環境に関する重大な法令違反はありませんでした。台車を使用した廃油運搬時の転倒による油流出事故が1件発生しましたが、流出した油は少量であり、土壌や公共用水域への流出はなく、再発防止対策も完了しています。
昨今の環境問題への関心の高まりから、日用品にも多く使用されている有機フッ素系化合物(PFAS)の使用が制限されるなど、有害化学物質に関する規制は世界的に年々厳しくなっています。
ミツバグループは、ミツバ環境宣言において「汚染物質の削減と適正な処理に努める」と掲げており、 POPs条約(※1)をはじめ、欧州ELV指令(※2)、欧州REACH規則(※3)、米国TSCA規制(※4)など各国、各地域の法規制の強化に対応するため、製品への使用を含め、化学物質の適正管理と有害化学物質の使用廃止に積極的に取り組んでいます。
(※1) POPs条約:残留性有機汚染物質(POPs)の製造および使用の廃絶・制限等を規定
(※2) 欧州ELV指令:使用済み自動車が環境に与える負荷を低減するための指令、鉛・水銀・カドミウム・六価クロムの使用制限等を定めている
(※3) 欧州REACH規則:人の健康や環境の保護のための化学品の登録、評価、認可および制限に関する規則
(※4) 米国TSCA規制:有害物質規制法。人の健康または環境を損なう不当なリスクをもたらす化学物質および混合物の規制に関する法律。
ミツバは、製品に関する環境法規制や顧客要求、業界動向を監視し、規制を遵守するために製品中の有害物質を削減または段階的に廃止するグループ代替方針を策定、推進する体制として、製品規制物質委員会を設置しています。これにより、横断的に情報を共有し、目標達成に向けて活動しています。
ミツバでは、製品中の有害化学物質の含有状況を把握するとともに、お客さまから要求があった際には、IMDS(※5)やJAPIAシート(※6)など各種データを速やかに提出するためのシステムをグローバルで整備しています。また、管理体制に関する調査や顧客監査への対応などを適切に実施しています。
製品に関する規制を遵守するため、開発、生産、物流の各段階で管理を徹底していますが、お取引先さまの協力が不可欠です。ミツバは、お取引先さまにも業界標準(GADSL ※7)に各顧客の独自要求を加えた「ミツバ製品規制物質リスト」や「グループグリーン購買ガイドライン」に基づいた管理の徹底を求めています。
(※5) IMDS:自動車等の部品や材料に含有する化学物質の調査を行い、完成車の法規適合を確認するためのオンラインシステム
(※6) JAPIAシート:JAMA(日本自動車工業会)と JAPIA(日本自動車部品工業会)が作成した、製品に含有する材料成分を登録するフォーマット
(※7) GADSL:欧州、米国、日本の自動車メーカーにより合意された禁止・申告物質リスト
ミツバは、自己診断シート(※8)を活用して管理対応力を評価・数値化し、改善点の抽出および施策を立案し、改善に努めてきました。具体的には、新規部品や材料変更する部品の適切なタイミングで法規適合を確認する仕組みの構築、顧客要求の受け入れ窓口管理の仕組みの強化、取引先の監査手順の明確化、IMDSデータ提出に関する手順書の整備・充実、教育の制度化等の施策を推進し、その結果として、2023年度は大幅な点数アップにつながりました。
(※8) 自己診断シート : JAMA・JAPIA 製品含有化学物質管理ガイドライン(※9)に定めた管理項目に対して、自社の実施状況の実態を5点満点で自己評価する業界標準のツール
(※9) JAMA・JAPIA 製品含有化学物質管理ガイドライン : 日本自動車工業会(JAMA)と日本自動車部品工業会(JAPIA)が、自動車業界全体での適切な製品に含有する化学物質管理を目的に策定した業界標準のガイドライン
ミツバは、製品の規制物質管理体制をさらに強化していくために、開発、営業、購買および品質部門に向けた一般教育および専門教育を企画し実施しています。専門教育では、初級編、中級編およびIMDS編の3部構成とし、教育内容を充実させるとともに、階層別、業務担当別に過不足なく適切に受講できる仕組みを構築しています。また、海外グループ会社の担当者も受講できるように、教育動画を配信しています。さらに海外グループ会社に対するヘルプデスクを日本に設置し、必要時には含有物質の法規適合の判断や顧客へのIMDSデータ提出手順等を個別に教育する体制を整備しています。
本教育を通じて、製品の規制物質への対応が自分事化され、必要な知識を習得することにより、グループでの法令遵守の達成・維持に向けて、より積極的な取り組みへと加速しています。
ミツバは、日本自動車工業会および日本自動車部品工業会が主導となった製品含有化学物質管理の「業界標準チェックシートTF」に参画し、自己診断シートの作成に関する業界活動に貢献しました。本活動を通して、業界の管理基準の理解が深まりました。本ツール活用により、サプライチェーン全体を通した効率的な管理体制の向上に取り組んでいます。また、各国の禁止物質追加法案に対する自動車業界への影響調査に協力し、社会活動を妨げない法規制への渉外活動に貢献しています。
現場視察
ミツバは、グループ会社の品質関係者に対して自己診断シートの診断結果の検証および改善指導を行い、管理体制の強化を図っています。また、樹脂加工工程等の現場視察により適切な管理を確認するとともに、リサイクル材料や化学物質の変換工程に関する情報を交換し、相互の知識向上に取り組んでいます。
管理体制の確認が必要と判断したお取引先さまには、自己診断シートによる自己評価を依頼し、その結果を基に管理体制監査を実施して、問題がないことを確認しています。また改善点の指摘および是正措置の要請・刈り取りを行い、さらなる管理体制の強化にご協力いただいています。
ミツバグループは、豊かな自然を守るため、自然環境保全に積極的に貢献していくことを「ミツバ環境ビジョン2046」で定めています。緑豊かな森林を育てることは、動植物や自然環境、生活環境を保全し、生態系や生物多様性の保全にもつながります。グループ各社では、周辺の自然環境を確認するとともに、森林整備や植樹、環境美化活動を活発に実施しています。また、事業活動による生物多様性への影響の最小化を目指し、工場からの排ガス測定や排水測定を法定頻度以上に実施、評価しています。
自治体や地権者と協定を結んで継続的に実施している森林整備活動では、新型コロナウイルス感染防止のため規模を縮小していますが継続しており、絶滅危惧Ⅱ類の「キンラン」の生育が確認されています。
ミツバグループは、「ミツバは、ミツバを愛しささえる人々とともに、社会と環境に調和した技術の創造を通して、世界の人々に喜びと安心を提供する」を企業理念として掲げ、数多くの車載電装品を開発・製造・販売し、モビリティ社会の発展とともに、世界の人々に喜びと安心を提供してきました。この理念に基づき、「ミツバビジョン2030」を策定し、電動化への最適ソリューションで、脱炭素社会の実現に貢献し、共に成長し続ける企業グループを目指しています。ミツバグループが将来にわたって持続的に発展していくためには、気候変動の視点を取り入れた経営の更なる推進が必要になると考え、TCFD提言に基づく分析を実施しました。さらに、2023年11月にTCFD(※1)提言への賛同を表明するとともに、TCFDコンソーシアム(※2)に加入しました。
今後も、ミツバグループを取り巻く事業環境を認識し、リスク・機会の分析を深化させるとともに、当該分析を経営戦略に活かし、脱炭素社会の実現に向けた対応策を一層推進してまいります。
※1:TCFDとは、G20の要請を受け、金融安定理事会により設立された「気候関連財務情報開示タスクフォース(Task Force on Climate-related Financial Disclosures)」を指します。TCFDは2017年6月に最終報告書を公表し、企業等に対し、気候変動関連リスク、及び機会に関する項目について開示することを推奨している。
※2:企業の効果的な情報開示や開示された情報を金融機関などの適切な投資判断に繋げるための取組みについて議論が行われる場として2019年5月27日に設立。経済産業省・金融庁・環境省がオブザーバーとして参加。
ミツバグループでは、サステナビリティ領域における業務執行会議であるESG会議(議長:代表取締役副社長執行役員)により、ミツバグループが特に解決に注力すべき社会的な課題を重点課題として設定し、目標を明確化、進捗を年4回モニタリングしています。ESG会議における審議事項は、年に2度、経営会議で報告されており、必要に応じて取締役会へ報告されています。
リスク管理については、ミツバグループでは、ESG会議において気候変動含む全社の「事業等のリスク」を定期的(年1回)に洗い出し、発生頻度およびさまざまな影響度から評価しています。その上で、ESG会議の傘下に各領域別に課題解決のための委員会を設置しています。
気候変動への対応については、2021年度よりカーボンニュートラル委員会(委員長:専務執行役員)を発足し、その直下に開発、生産技術、 生産、サプライチェーンマネジメントの領域を分けた推進部会を設置して、ミツバグループカーボンニュートラル方針の制定、ライフサイクルを通した製品1個当たりのCO2排出量の見える化、およびサプライチェーン全体でのCO2排出総量の把握・削減に努めています。
環境マネジメントについては、EMS委員会を中心に環境マネジメントの運用、環境保全活動に取り組んでいます。年に1度、全社環境統括管理者である副社長執行役員によるレビューを行い、取り組みの有効性および適切性を確認、経営への影響度が大きい案件についてはESG会議にて決議しています。
BCM(事業継続マネジメント)については、BCP委員会を中心に製品供給義務を果たすための適切な管理体制を整備しています。
TCFD提言では、気候変動に関するシナリオを複数設定し、気候関連のリスク・機会がもたらす組織の事業、戦略、財務計画への実際および潜在的影響を分析、いずれのシナリオにおいても対応策を示すことで、自社戦略のレジリエンスを示すことが推奨されています。ミツバグループでは、下表の通り2つのシナリオを想定し分析を実施しました。それぞれのシナリオ、世界観の概要および参照シナリオは以下の通りです。
名称 | 1.5℃/2℃シナリオ | 4℃シナリオ |
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シナリオの概要 | ・ 脱炭素社会に向けた移行が加速することにより、気温上昇が産業革命前の水準から1.5℃/2℃にとどまるシナリオ ・主に脱炭素社会への移行リスクが顕在化 |
・脱炭素社会に向けた現状を上回る施策が取られないことで地球温暖化が進展し、気温上昇が産業革命前の水準から4℃となるシナリオ ・主に気候変動による物理リスクが顕在化 |
世界観の概要 | ・炭素税の導入や再生可能エネルギーの拡大等、脱炭素社会への移行に向けた政策および法規制等の変化により、企業の対応コストや追加投資が増加する ・四輪車や二輪車市場の電動化が急速に進展し、モビリティに対する顧客の嗜好も変化する |
・脱炭素社会への移行に向けた政策および法規制の導入は限定的 ・四輪車や二輪車市場の電動化は一定程度進むも、その進捗は限定的 ・気候変動の進展に伴い、気候パターンの変化、異常気象の激甚化・頻発化等により操業への影響が生じ、サプライチェーンリスク管理やBCPの見直しの重要性が高まる |
主な参照シナリオ | ・ IEA World Energy Outlook 2022, Announced Pledges Scenario(APS, パリ協定の目標達成シナリオ), Net Zero Emissions by 2050 Scenario(NZE, ネットゼロ達成シナリオ) ・IPCC第6次評価報告書 SSP1-2.6 |
・IEA World Energy Outlook 2022, Stated Policies Scenario(STEPS, 現状の政策シナリオ) ・IPCC第6次評価報告書 SSP5-8.5 |
上記シナリオを前提に、自動車業界のシナリオ分析および自社の中期経営計画(2023-2027年度)における事業環境認識等を勘案のうえ、下表の通り、ミツバグループが想定する気候変動関連リスクと機会の特定および影響度評価を行いました。特定されたリスク・機会のうち、ミツバグループにとって重要な項目は、「脱炭素社会への移行に向けた政策および法規制(カーボンプライシングとエネルギー)」および「四輪車や二輪車市場の電動化の進展」、「異常気象等の物理リスク」と認識しており、同項目に沿って以下整理をしています。
重要な項目 | リスク | 時間軸 | 影響度 | 機会 | 時間軸 | 影響度 | 主に関連するシナリオ | |
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脱炭素社会への 移行に向けた 政策および法規制 |
カーボン プライシング |
炭素税導入・国境炭素税導入によるコストの増加 | 短期~長期 | 大 | エネルギー効率の高い生産設備への切り替えによる事業運営コストの低減 生産・物流の効率化による事業運営コストの低減 | 短期~長期 | 中 | 1.5℃/2℃ |
サプライチェーン全体でのCO2削減要求の高まりによる調達コスト・対応コストの増加 | 短期~長期 | 大 | ||||||
エネルギー | 各国での再生可能エネルギー拡大によるエネルギーコストの増加 | 短期~長期 | 大 | |||||
省エネ・再エネ設備の開発・導入等による対応コスト・追加投資の増加 | 短期~長期 | 大 | ||||||
四輪車や二輪車市場の電動化の進展 (技術、市場、評判) |
燃費・ZEV規制等の強化によるICE販売台数の減少、およびICE向け商品需要の減少 | 短期~長期 | 大 | ICEの低燃費化、CO2排出量削減を目的に、車両の軽量化、エンジンの負荷軽減等への貢献 | 短期~中期 | 大 | 1.5℃/2℃ | |
電動化等のCASEの進展によるOEMおよび消費者の変化に対応できないことによる売上の減少 | 短期~長期 | 大 | ユーザーへの価値提供を目的とした電動化商品の増加 CASEの進展に伴うモーターの電子制御化による商品付加価値の向上 | 短期~長期 | 大 | 1.5℃/2℃ | ||
脱炭素化に伴う軽量化や省電力に対応した新商品の拡大 | 長期 | 大 | 1.5℃/2℃ | |||||
脱炭素社会への対応遅れによる、投資家や従業員、顧客等、ステークホルダーからの選好・ブランドイメージの低下 | 短期~長期 | 中 | 脱炭素化への貢献に関する効果的なステークホルダーコミュニケーションを通じた、ESG投資家の支持拡大、優秀な人材の獲得、顧客層の維持・拡大 | 短期~長期 | 中 | 1.5℃/2℃ | ||
異常気象等の物理リスク | 異常気象(大雨・洪水等)による本社・生産拠点の被害、操業への影響 | 長期 | 大 | 災害時における安定供給の確保による顧客からの信頼 | 長期 | 中 | 4℃ | |
異常気象によるサプライチェーンの寸断により、生産・販売が停止、売上が減少、および原材料、部品の代替調達、ならびに異常気象による世界的なパンデミック拡大等、対応コストが増加 | 長期 | 大 |
※分析対象:ミツバ単体における国内の輸送機器関連事業、ミツバ関連企業における海外(中国・その他アジアが中心)の輸送機器関連事業
※時間軸:短期→2027年まで(ミツバグループ「中期経営計画(2023-2027)」期間)、中期→2030年まで、長期→2050年まで
※影響度:ミツバグループ事業への影響を総合的に勘案し、大、中、小の3段階
ミツバグループにとって、特に「四輪車や二輪車市場の電動化の進展」については、リスク・機会両面において事業への影響が大きいものと認識しています。このリスク・機会への対応方針としては、短・中期では、電動化への移行期に重要となるICEの低燃費化、CO2排出量削減ニーズに着実に対応して、事業環境の変化に耐え得る財務基盤を強化するとともに、電動車向け新製品の開発投資を積極化し、顧客の多様化など拡販戦略を実行します。長期では、電動車向け製品ポートフォリオを売上・収益の中核に育てる等の取り組みを進めてまいります。
「脱炭素社会への移行に向けた政策および法規制(カーボンプライシングおよびエネルギー)」及び「異常気象等の物理リスク」については、下表の通りいずれもサプライチェーン全体を意識した対応を進めてまいります。
重要な項目 | 対応策 | |
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脱炭素社会への 移行に向けた 政策および法規制 |
カーボン プライシング |
【サプライチェーン全体でのCO2排出量の削減】 ・省エネ設備への計画的な更新を継続 ・設備の電動化や加熱工程の削減、リサイクル材活用等、生産設備の製作・工程設計の段階から源流にさかのぼった改善活動を継続 ・再生可能エネルギー活用(太陽光発電等)の積極推進を継続 ・環境マネジメントシステム(EMS)を調達先等サプライチェーン全体に拡大 ・調達先のCO2排出量の調査や削減策の特定、およびグループ拠点間の輸送に関わるCO2排出量の調査や削減等、サプライチェーンマネジメント全体での取り組みを推進 |
エネルギー | ||
四輪車や二輪車市場の電動化の進展 | 【電動化への移行期に重要となるICEの低燃費化、CO₂排出量削減ニーズへの対応】 ・短・中期では、四輪・二輪ICEの低燃費化、CO₂排出量削減ニーズを着実に捉え、各地域によって異なる脱炭素社会への移行過程を支えるとともに、 製品の高収益化を通じて財務基盤を強化する(成長ポテンシャルのある「四輪:熱マネジメント系、シャーシ系(循環系等)」「二輪:エンジン補器系」等) ・二輪事業においては、ZEVの前段階として見込まれる高濃度エタノール車、FFM車(フレキシブル・フューエル・モーターサイクル)向け製品ニーズへ貢献 【電動化の進展に対応した新分野、新製品の開発・販売拡張】 ・電子制御化ニーズの増加に伴い拡大するモーター需要に対し安定供給を通じて貢献 ・事業ポートフォリオの多くを占める駆動方式によらない既存製品群を四輪・二輪電動車向けにカスタマイズし、新たな市場を開拓 ・電動化ソリューション事業による四輪電動車向け製品(熱マネジメント/ADAS/自動運転向け)等、電動化に対応した高付加価値製品の開発・販売を加速 ・中国・インドのEV・OEMの新規市場を開拓 ・MaaS対応の次世代モビリティ関連への商品やサービス等 |
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異常気象等の物理リスク | 【サプライチェーン全体での災害対策の高度化】 ・BCP(事業継続計画)およびBCM(事業継続マネジメント)の構築・実践 ・異常気象等の物理リスク(本社・生産拠点の被害、操業への影響、サプライチェーンの寸断等)に備えた設備投資 ・サプライチェーンマネジメントの強化 ・異常気象によるパンデミック等への対応として、従業員の健康管理や感染症予防など健康経営施策のさらなる推進 |
当社は、「ミツバグループ カーボンニュートラル方針」(図2)に基づき、CO2排出量Scope1およびScope2に関し、2030年までに2018年比で50%削減、2050年までにライフサイクル全体でのカーボンニュートラル達成を目指すことを目標として掲げています。
なお、当社グループにおける2023年度のCO2排出量実績は、Scope1で11,704t-CO2、Scope2で 139,000t-CO2、Scope3で1,870,462t-CO2となっています。ミツバグループ サステナビリティ報告書を用いて毎年開示していきます。
TCFD報告書 (PDF:1.7MB/全11ページ)